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ニ月礼者 【上海の街角で 井上邦久】vol28 (読む時間:約3分半) 2017.02.20


二月礼者の意味を辞書や歳時記で調べると、年明け早々に多用であった為、年始挨拶ができず、二月になって関係先の挨拶に回る人、またはその風習、とあります。ただ、今の日本にそんな人や風習が多く残っているとは思えませんし、二月どころか正月でも私的な挨拶回りは徐々に減っているようです。年賀状も元はと云えば、年始回りを端折って葉書一枚で代用する簡便法が始まりだと思います。昨今ではその簡便な年賀状さえも省略してメールで済ませる御仁が増えています。


中国ではもともと日本ほど年賀状の習慣が盛んではなかったようですが、少し前に学校生徒による豪華なグリーティングカードの交換が社会教育問題になっていました。そして昨今では紅包をチャットで贈るスタイルが新常態化しそうな気配のようです。


そんな中で二月礼者とは絶滅危惧種のような年始挨拶の形態のようでもあります。ただ日本の正月祝いと中国の春節祝賀を補完する意味では、それはそれで便利な言葉のような気がします。米国の偉い人はもっと上手で、中国の偉い人への春節の挨拶は失念したものの、元宵節には何とかメッセージを届けて帳尻合わせをしたのは周知のこととなりました。


ところで、この二月礼者という季語を知ったのは、


紹興酒ぶらさげ二月礼者かな   瞿麦


という俳句を知ったことがきっかけです。これは上海在住の朱實先生の作品です。台湾彰化の人、笑いながら大正生まれと自称される朱實老師は、瞿麦という俳号で長年に渡り俳句や漢俳(漢字のみで五七五文字)の秀作を残されています。或る方の紹介で朱實(瞿麦)老師との交流が始まったいきさつは、この欄で拙文が掲載されるようになった第一回目に綴っています。その後も俳句や漢俳のご教示を頂いたり、おこがましくも老師の漢俳を俳句に移してみたりの試みを続けています。また、映画監督の山田洋次さんとの仲介をさせて頂いたこともあります。山田作品の『家族はつらいよ』がもうすぐ中国でも公開されるらしいことも嬉しいことです。


ここで、汗顔の至りではありますが老師の漢俳と拙訳による俳句への置き換えを参考までに例示させてもらいます。


 一雷驚百蟲 万象更新新春意濃 耕種微雨中   瞿麦先生
    啓蟄や万象目覚む微雨のなか       拙


 掌中転胡桃 緩緩自問又自答 秋思幾多愁    瞿麦先生
    掌に胡桃自問自答で夕べまで       拙


二月礼者の句は朱實先生が日本の大学で教鞭を取っていた頃に句誌に残されたようです。 それから幾星霜が過ぎた昨年の秋、東京神田のA社が主催する「伝統を次代に繋ぐ」秀作俳句展示会に二月礼者の句が選ばれたようだと老師からの電話がありました。おめでとうございます、と天真爛漫に反応したところ、実はそれほど単純ではなくて、出品するとなると、先ずは手数料が必要で、更には西陣織による高級表装の「実費代」として、合計で十万円近くを送金しなければならない由で、どうしたものかなとの相談でした。


この文化的な縫いぐるみをまとった申し入れは、海を越えた大掛かりな企画工夫だから丁重に対応すべきだ、と日本在住の朱老師の息子さんからのご連絡がありました。それは婉曲に謝絶すべきだとの穏当なご意見でした。上海のベテランの詩人たちの会合では若さ溢れる熱気侠気から「作品を提供する場合は、逆に主催者から作者へ謝礼金を払うのが筋だ」という意見が多かったとのことでした。最終的に老師にはA社の担当者に対し、愛着のある旧作を日本で展示して頂けるのは光栄です、ただ上海で隠遁世活をしている老書生らしく自筆色紙を会場の隅に掲げて頂ければ幸いです、と返事をしてもらいました。加えて上海からの色紙の制作料と国際航空郵送料は作者で負担するという申し出をされましたが、A社からは音沙汰のないままになったようです。


「二月礼者」という季語、「婉謝」という対応姿勢、卒寿を超えた老師の聡明さを学ばせてもらいました。それにしても日本と中国の文化交流は、俳句と漢俳の交流のように一筋縄にはいかず、落とし穴もあることを再認識しました。諸事情と怠惰のため、日本の年初の挨拶を控えた不肖の弟子は老師の軽味に倣って、春節の頃に年始の挨拶句を捻ってみましたが・・・


     微醺帯び二月礼者と知られたる  (拙)


(了)


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