新規登録
コラムニスト募集中
日経新聞
DMMコラム
蘇州たより
上海の街角で
JETRO
上海日本商工クラブ
在上海日本国総領事館
ラクト
上海人
香港リーダーズ
C.L.Mリーダーズ
経営者.マガジン読者の集い
2015稲盛和夫経営哲学上海報告会
中国ニュース
株式会社TOHOKI
人気ページランキング
  • 今週
  • 今月
  • 殿堂
  • JBSコラム Vol.3

  • 会計税務、人事労務、法務、健康、教育等、会社の進出から撤退までをワンストップで支援。

  • 上海リーグ法律事務所 コラム vol2

  • ビジネスシーンで活用する中国語講座vol4

  • 知的財産権の取得・侵害対策、企業内不正対応を中心に、中国での企業活動をワンストップで支援。

  • JBSコラム Vol.3

  • ビジネスシーンで活用する中国語講座vol4

  • 知的財産権の取得・侵害対策、企業内不正対応を中心に、中国での企業活動をワンストップで支援。

  • 上海リーグ法律事務所 コラム vol2

  • 会計税務、人事労務、法務、健康、教育等、会社の進出から撤退までをワンストップで支援。

  • “One Team, No Border” 会計税務を中心に企業のグローバル化を全力で支援しております。

  • ビジネスシーンで活用する中国語講座 vol.8

  • 微博・微信を中心とする中国ソーシャルソリューションサービスをワンストップで提供しています。

  • 会計税務、人事労務、法務、健康、教育等、会社の進出から撤退までをワンストップで支援。

  • リスク管理領域を中心に日系企業の中国事業を支援させて頂きます。

優しさ 【上海の街角で 井上邦久】vol33 (読む時間:約3分) 2017.07.30

「一つとして同じ場所のない地形に人は住み、独自の文明文化をつくり出す。多くの国がほこりうる『歴史』は、そんな人々の蓄積と時間の成層の賜物であるが、〇〇には歴史を誇れる基礎もなければ、文化を形成する人間の集団もなかった。しかし突然『開国』という変革がもたらされる。時間と文明が〇〇という土地に触れあった瞬間、火花を散らしたのだ。歴史ももたず、誰もがスタート地点にたてる『〇〇』という時空間に住まう人は優しい。強引な手段によって塗り替えられた歴史の記憶がないからだ。」


冒頭から他著の引用で恐縮ながら、酷暑を言い訳に手抜きをしたと叱責されても、甘んじて受けさせていただきます。さて引用文では「〇〇」と伏字にしましたが、原文には何と書かれているのでしょうと、国語か歴史の試験のように問えば、上海在住の各位は「〇〇は、たぶん上海か横浜だろう」と即答されるでしょう。


ただ上海には県城もあり歴史が皆無とはいえません。また住まう人が優しいか?については個々の体験や感受性で異なってきます。そして「強引な手段によって塗り替えられた歴史の記憶が無いか?」についても大いに疑問があるので、〇〇は上海ではなく、横浜が正解であろう」と回答される諸賢が多いことでしょう。


『横浜大桟橋物語』(客船とみなと遺産の会 編:2014年)という本があります。広角度に視点と事例選択を拡げ、バランスの良い丁寧な編集で作りあげた書籍の横浜についての冒頭文からの引用でした。


横浜の優しさ、ということでは次のコメントも印象的です。
「基本的に(横浜)ベイスターズファンは優しい、本当に優しいですよ。(中略)あんなひどい状態でも応援し続けてくれるんですから。
辛抱強いというか、本当に不思議というか・・・好きなんですよね。」
という月刊ベイスターズファン元編集長の岸野啓行氏の発言を好著『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ 涙の球団史』(村瀬秀信 双葉社)に見つけたものです。


実際に美しく便利に整備された横浜の街で接する人たちは、大声で自己主張することも少なく、さりげなく機能やサービスを提供しながら、各自の好みの生活を維持しているように見受けられます。


ただ、優しいという理由に「強引な手段によって塗り替えられた歴史の記憶がないからだ」と断定されると、そうとばかりは言えないのではないか、と疑義が生まれてきます。先の大戦末期に、強引な手段で(神奈川県警、笹下拘置所などで)個人や中央公論・改造社を抹殺した「横浜事件」を今こそ思い起こすべきではないか、と思うのです。治安維持法の運用強化、言論統制による異議申し立てへの封じ込めが行われ、予見逮捕と拷問による自白強要が続き、体力の限界に至ってから保釈され直後に死亡した人もいます。「横浜事件」のきっかけの一つは、細川嘉六氏の論文完成慰労会が富山県泊温泉で行われ、浴衣姿の編集者らを撮った旅の思い出写真を「党再建の共同謀議」の動かぬ証拠として、神奈川県警が中心となって捜査した事にあります。


戦後、一部のグループが無罪認定と補償を求めて起こした訴訟も「証拠消滅」を理由に門前払いが続きました。遺族ら支援の会による粘り強い行動により、2009年3月30日になりようやく横浜地裁で「免訴」「実質無罪」の判決が出て、一矢を報いることができました。


春からの国会で、強引な形で「共謀罪」の法制化が進められた頃、古くから横浜の文化を担う有隣堂や高橋書店を巡り、「横浜事件」に関する本の売れ行きを確認したところ、一冊も置いていないことに愕然としました。書店の人も此方の意図を理解しつつ、版元での絶版が多いことと購入の動きが乏しいことを口にしていました。国会への不満と「横浜事件」が地元でも結びつかないのは、「優しさ」ではなく、「歴史の記憶」がなくなっているということでしょうか?


(了)


コラムニストの過去の記事も読む